opening

サステナビリティへの取組

1.サステナビリティの考え方

気候変動による大規模自然災害の発生や人権問題など様々な社会課題に対して、SDGs(持続可能な開発目標)や当社の企業経営を取り巻く環境等を勘案した上で重要課題を特定し事業活動を通じて課題解決を図ることは、企業の果たすべき役割として益々重要さを増してきていると考えております。

当社は、1943年創業以来、抵抗器をはじめとして、モジュール製品、センサなど電子部品の開発、提供を通じて、人びとの豊かさや安心、安全なくらしに貢献してまいりました。今後は、当社が強みを持つ保有技術の応用により、DX(Digital Transformation)及びGX(Green Transformation)を主眼として、新時代の社会価値創造に向けた製品開発を強化していきたいと考えております。

また、人材の多様性は不可欠であり、人的資本価値を高めるための組織内環境の整備を進めるとともに、経営面においても環境や社会の変化に伴う不確実性要因などに対応できる強靭な経営体制を築くことなど、企業統治体制の強化に努めてまいります。

当社は、経営層や多くの従業員の参画により、将来においての気候変動関連リスクや社会構造の変化がもたらす企業への影響を想定し、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点から重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。特定したマテリアリティを経営の根幹として位置づけ、全社一丸となって取り組むことで、事業の成長に努めてまいります。そのことが、未来社会への貢献として企業の存在意義を果たしていくことにもつながると考えております。

これからも、事業活動を通じて新時代の社会価値を創造することで、皆様の期待に応えられるよう努めてまいります。

2.サステナビリティを巡る取組みについての基本的な方針

当社は「世の中にないものを生み出すことに挑戦し、ものづくりを通じてイノベーションを起こす企業」を目指すという方針に基づき、サステナビリティ社会に求められる製品の開発・提供を進めています。

当社が培ってきた保有技術の応用、多様な人材の採用・有効活用により、中長期的な企業価値向上の観点から社会貢献にも積極的・能動的に取り組むとともに、事業活動を通じて社会価値を継続的に創出し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

3.サステナビリティ推進体制

サステナビリティの取組みを推進するための取締役会直属の組織として「サステナビリティ委員会」を2022年5月に設置しました。サステナビリティ統括責任者である代表取締役を委員長とし、執行役員および事業本部長を中心に構成しています。同委員会にてサステナビリティに関する方針や目標、実行計画の策定、目標に対する進捗管理や評価、個別施策の審議等を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行うこととし、サステナビリティ推進に取り組んでおります。

サステナビリティ・マネジメント体制

画像

4.北陸電気工業のマテリアリティ

社会経済のグローバル化や気候変動の深刻化などにより、世界が直面する社会課題はさらに拡大し、新たな課題が次々と顕在化しています。これらの社会課題による社会・経済および自社への影響を認識するため、マテリアリティ(重要課題)を以下のように取締役会において特定いたしました。

注力していく
重要課題(マテリアリティ)
主な取組課題
E :環境 気候変動(脱炭素)への取組 CO2排出量 2030年度 46%削減
環境配慮型製品の開発
サプライチェーンに係わる
環境負荷管理
LCAによる製品のCO2排出量把握
材料・工程見直しによる環境負荷低減
S:社会 ダイバーシティと
インクルージョン
従業員エンゲージメント
女性管理職比率の引き上げ
G:ガバナンス リスクマネジメント・ガバナンス リスク管理、コンプライアンス体制の強化
製品品質 製造工程の継続的改善
品質コンプライアンスの徹底

マテリアリティの特定プロセス

サステナビリティの観点から、当社に関連の深い社会課題をSDGsやGRIガイドライン等を参照の上抽出し、これらを「当社にとっての重要度」と「社会にとっての重要度」の2つの指標で評価した上で、当社が取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を次のステップで特定しました。

Step1

当社が認識している課題に加え、当社の2050年の未来像をSDGsやGRIガイドラインなどを参照し想像しながら課題を挙げ、当社にとっての重要度と社会にとっての重要度を評価し、重要度の高いものを抽出しました。

Step2

役員、従業員と幅広くアンケート調査を行い、最終的なマテリアリティ候補を選定しました。

Step3

各マテリアリティに対する方針、取組内容、KPI(重要業績評価指標)を設定し、取締役会での承認を得ております。特定したマテリアリティはサステナビリティ委員会に報告され、進捗管理を実施しております。

5.サステナビリティの取組み

E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の視点に基づいた当社のマテリアリティについて策定し、中期経営計画に反映しております。

環境については、特に以下の2点に重点を置いて推進してまいります。

①事業活動によるCO2排出量削減に努める。

②顧客の環境負荷軽減に寄与する機能アップ及び、軽薄短小で高効率・高性能な環境配慮型の製品開発を強化する。

社会については、ダイバーシティとインクルージョンに重点を置き、多様な個性、特徴、経験を持つ人材がより活躍できるよう、努めることとしております。

ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスについては、当社の成長基盤となる事項であり、充実強化に努めてまいります。

画像

6.人的資本・知的財産への投資

人的資本・知的財産などの経営資源は企業価値向上に資するよう適正かつ効率的に配分しており、それらへの投資については、有価証券報告書等で毎期開示することとしております。

<中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方>

当社は、多様な人材の多様な働き方を支援する働きやすい企業を目指し、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境・制度の整備を行っております。また、従業員の個性を尊重し、その特徴を活かし、活き活きと働くことで成果を高めていけるようにすることが企業成長の原動力であると考えております。

また、「良い製品を作り社会の発展に尽くす」という理念のもと、多様な人材による衆知の結集により、「世の中にないものを生み出すことに挑戦し、ものづくりを通じてイノベーションを起こす企業」を目指しております。イノベーションによる成長を遂げる為、さまざまな個性・能力・知見を備えた個々の人材を大切にし、その多様性を尊重し、絶えず学習し、成長し続けるように取り組んでおります。

加えて、能力発揮度合いに基づく公正な評価での登用・処遇を行うことで、女性、外国人、中途採用者、シルバーエイジや障がい者など、多様な個性、特徴、経験をもつ人材が中核人材として活躍できるよう、人的資本価値を高める取組みを進めます。

<多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針>
(人材育成方針)

通信教育、集合研修、eラーニングなど学びの形態は増えてきています。様々な形態の中で語学教育やデジタル人材の育成研修、リーダーシップ研修、意識改革研修のトレーニングなど、教育体系に基づく年度計画により教育を実施するとともに、時代にマッチしたタイムリーな教育を受けられるよう、年度計画に入っていない教育についても各事業本部の裁量で受講を進められるなど、柔軟な対応を進めます。

今後も、「働き方改革」「ダイバーシティ推進」に向けて業務改革を推進できるよう、個々のスキルを高める為の教育を継続してまいります。

(社内環境整備方針)

人種・国籍・性別・年齢・宗教・心身障がいの有無等に関わらず、多様な人材がライフスタイルにあった働き方で個性と能力を発揮できる企業風土づくりを推進します。

多様な人材を尊重するとともに様々な視点を受容し、活躍の場を提供することで、変化し続けるビジネス環境に対応し企業価値を高めていきます。これまでも中途採用者の拡大、女性登用などを推進してきましたが、更に快適で働きやすい明るい職場づくりなどの環境整備、心身の健康づくりに積極的に取り組んでまいります。

出産・育児・介護、その他の様々なライフイベントが発生しても仕事と両立できるよう支援制度を整えることで、すべての社員が継続して働きやすい職場となるよう「育児休業」や「介護休業」だけでなく、復職後の「短時間勤務」なども含めて環境整備を進めております。

こうした環境を維持・発展させるため、定期的に個人別の面談を実施するとともに、労使会議も開催するなど、多様な目線からの意見聴取等を継続して風通しの良い企業風土を構築いたします。

<知的財産権に関する基本方針>

当社は、自社の研究開発の成果を知的財産として保護し、これを利用して事業拡大を図ると共に、第三者の知的財産を尊重することを基本方針としています。

(知的財産権に対する対応)

当社は、特許などの出願前に、先行技術調査を徹底すると共に、各国の知的財産に関する法律・審査基準やプロセスを把握し、更に、海外での特許取得の効果・意義の検討を加え、知的財産権取得の精度アップ、効率向上に努めています。

また、自社製品・サービスの開発段階から、第三者の知的財産の調査を行い、自社製品・サービスとの比較検討を行うことで、第三者の知的財産を侵害するリスクを低減することや、開発効率の向上に努めています。

製品・サービスの開発に関わる技術者全員には、知的財産の重要性や第三者の知的財産権侵害リスク等について啓蒙を図ることのみならず、技術者自らが先行技術を調査できるよう教育を進めています。更に、他社との協業や共同研究・共同開発に於いては、事前の契約内容について、専門部署を含めた精査を充分に行った上で事業を進めています。

7.気候変動への取組み(TCFD提言への対応)

当社にとって、気候変動は事業継続に影響を及ぼす重要課題の一つです。当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の開示の枠組みに沿って、気候変動が当社の事業に与えるリスク・機会を分析して経営戦略・リスク管理に反映するとともに、その進捗を適切に開示し、さらなる成長をめざすとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

① ガバナンス

<気候関連リスクと機会にかかわるガバナンス>

当社の主力製品である電子部品は、様々な分野で使われており、製品製造にあたり、サプライチェーン全体では相当のCO2排出量になると認識しています。

その認識のもと、気候変動問題を当社が社会的責任を果たし持続的に発展していくための重要課題の一つと捉え、サステナビリティ委員会でマネジメントしております。サステナビリティ委員会は、コーポレートガバナンス体制の一画を担う委員会として取締役会が設置しており、代表取締役が委員長を務め、サステナビリティに関する方針や目標、実行計画の策定、目標に対する進捗管理や評価、個別施策の審議等を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行うこととし、サステナビリティ推進に取り組んでおります。

② 戦略

<組織の事業・戦略・財務に対する気候関連リスクと機会の影響>

サプライチェーン全体でのCO2排出削減が求められる中、当社全体の排出量を削減できなければ、当社にとってリスクとなり得ます。一方、当社全体の排出量を削減することに加え、排出削減に寄与する製品の開発販売による貢献ができれば、事業拡大の機会となり得ます。

中期経営計画の中で、環境性能に優れた製品の拡大などにより、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2017年度比46%削減すること、2050年に自社事業による温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指すことを掲げております。

シナリオ分析の詳細

以下のシナリオを使用し、将来にわたり当社の業績に影響する事業リスクと、気候変動の課題解決に対応して創出できる事業機会を特定しています。

・IEA Sustainable Development Scenario(SDS)  1.7℃/2050  1.6℃/2100
・IEA Stated Policies Scenario(STEPS) 2.0℃/2050 2.6℃/2100
・IPCC AR6 SSP1-2.6 1.7℃/2050 1.8℃/2100
・IPCC AR6 SSP2-4.5 2.0℃/2050 2.7℃/2100
シナリオA
世界各国の協調による脱炭素化社会が進む
1.5℃シナリオ
シナリオB
世界各国の気候変動対策の取組みが二極化し
脱炭素化が進まない3℃シナリオ

温室効果ガスの削減・吸収・貯蓄・再利用に関する技術(CCS、CCUSなど)、太陽光発電や蓄電システムの低価格化・高性能化等、新技術が新たな経済成長の原動力になりうることが明確となり、国際協調による脱炭素化が進み気温上昇に歯止めがかかる。

当社を取り巻く環境においても脱炭素化に向けた動きが主流となり、車・家電・産業機器など全般的に軽薄短小、環境配慮の付加価値製品が増加し、電子部品業界は需要がさらに高まる。一方、製品に関する規制が高まる。

各国でEV化、太陽光発電、風力発電などの脱炭素インフラへの移行が進むものの、新技術が脱炭素化に与える影響は小さく、更なる気温上昇を招き、異常気象による自然災害の頻発化、激甚化が進む。

当社への影響についても相次ぐ自然災害によりサプライチェーンが分断され、安定的な生産、供給が困難になり、物不足が常態化しインフレが進んでいる。

③ リスク管理

<気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス>

気候変動に伴うリスクには、政策・規制の強化や技術の進展、市場や評判の変化など脱炭素社会への移行に起因するものと、急性的な異常気象の激甚化や慢性的な気温・海面上昇など気候変動の物理的な影響に起因するものが考えられます。また、機会には、資源の効率性向上、再生可能エネルギー化、製品品質の向上、レジリエンス(強靭性)といった側面が考えられます。

当社は、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「 移行リスク 」、「 物理的リスク 」、「 機会 」の区分で当社への影響を検討し、発生の可能性や財務上の影響を3段階で評価し、重要なリスクと機会を特定しています。

「移行リスク」、「物理的リスク」、「機会」とも、重要リスク・機会を特定したうえで、取組方針や対応策を検討し、取締役会にて決議しました。今後は年に一度、サステナビリティ委員会で検討を継続し、ブラッシュアップしてまいります。特定されたリスクと機会への取組方針、対応策を中期経営計画に反映し、各事業本部で実行しております。

また、気候関連リスクを、当社の事業戦略に大きな影響を与えるリスクの一つとしてリスク管理委員会に提言し、同委員会で全社リスクの管理状況について確認し、取締役会に報告します。取締役会では気候変動への対応に関する計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督してまいります。

気候関連リスク・機会

分類 当社への影響 発生の
可能性
財務上の
影響
リスク 移行 再生可能エネルギーの調達要求などによるコストの増加
炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、排出権取引などに伴うコストの増加
製品開発の遅れによる販売機会の逸失や既存製品の陳腐化による売上高の減少
物理的 気候変動に伴う台風や洪水などの災害により、グループ会社が操業できなくなる、および仕入先の操業停止や交通インフラの麻痺などで部品調達ができなくなる
機会 資源の効率性 より効率的な生産・物流プロセスの構築によるコストの削減
製品/サービス 環境配慮型製品の販売拡大が期待される
EVや自動運転用の電子部品需要の拡大が期待される
<気候関連リスク・機会の特定・評価・管理プロセス>
画像

④ 指標と目標

<気候関連リスクと機会を評価・管理するための指標と目標>

取締役会で決議した温室効果ガスの排出削減目標を中期経営計画に組み込むとともに、当社の重要課題として特定し、KPIを設定して進捗を管理しております。

a.2050年目標:温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す

事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーに切り替える

b.2030年度目標:Scope1, 2 46%削減(2017年度比)

電力の再生可能エネルギー比率:30%